歌舞伎

 松竹の二月花形歌舞伎の昼の部を観に行きました。演目は「毛抜」「鷺娘」「女殺油地獄」でした。「毛抜」は中村獅童が主役で出ていました。イヤホンガイドを借りたので、とてもよくわかりました。ガイドでも言っていましたが、ストーリーよりもショー的な要素が多い演目で、ひたすら面白かったです。「鷺娘」は悲恋の末、死んでしまった若い娘が鷺となって夜中に踊るお話で、登場人物は鷺娘だけです。セリフもなく、音楽があります。途中で回想シーンのように華やかだった娘時代、恋に喜び、恥じらう様子が表現され、また最後は始めの白鷺に返っていきます。何も語られはしないのですが、踊りの表現や音楽が巧みで、感動しました。「女殺油地獄」はイヤホンガイドでも、現代を先取りした作品と言っていたとおり、主人公の若者、与兵衛は性格が破綻していて、自己中心的でその場その場で言うことが異なり、平気でうそをつき、冷酷なこともできる反面、臆病で、その場では真剣で、お金にルーズで刹那的な人物です。借金を返すことができずに、結局強盗殺人をしてしまう。義理の父親と本当の母親の老夫婦が、勘当した息子、与兵衛を、勘当したけれど、立ち寄るかもしれない家によろしく頼むとお金を託す場面は、心が痛いほどに悲しみや愛情が伝わってきました。愛情を注いで育てたはずなのに、息子に暴力を振るわれ、うそをつかれて金を引き出され、でも愛情を断ち切ることはできない。近松門左衛門はほとんど現代を予言しています。