マルクスその2

賃銀・価格および利潤 (岩波文庫 白 124-8)

賃銀・価格および利潤 (岩波文庫 白 124-8)

 労働者の労働力の価値は次のように算定される。一日6時間の労働によって、3シリングの価値のものが買えるとするなら、その労働は3シリングの価値がある。しかし、資本家が一日に12時間働かせたとすると、労働者は6シリングの価値を生み出したことになる。しかし賃金は3シリングしか支払われないとするなら、資本家は3時間分の不払い労働によって3シリングの利潤を得たということになる。このように資本家が利潤を上げるために、労働者からの搾取をしなければならないということが制度的に組み込まれているのが資本主義社会だというのがマルクスの論旨である。これに加えて、貨幣の価値の下落などが生じた場合、賃金の価格が上昇しないのであれば、労働力の価値は相対的に下落することになる。また、労働者を働かせ得る時間は労働者の肉体的な限界に依拠し、資本家はその最大限まで使いたがり、賃金は最小限、これは生活必需品を買うことのできる最小限の額、に抑えようとする。それによって資本家の利潤は最大となる。ここに労働組合が労働時間の法制化、賃金の上昇のために闘う意義が生まれてくる。しかしマルクスは言う。景気の変動による賃金の変動に対するゲリラ戦に没頭すべきでなく、賃金制度の廃止のために闘わねばならぬとしている。「(労働組合は)労働者階級の完全解放という大利益において行動することを学ばねばならぬ。労働組合は、この目的を達成しようとする一切の社会的および政治的運動を支持せねばならぬ」今の日本の労働組合に聞かせてやりたいものだ。
労働時間に関して非常に共感した部分。「時間あってこそ人間は発達するのである。勝手にできる自由な時間のない人間、睡眠・食事などによる単なる生理的な中断は別として全生涯を資本家のための労働によって奪われる人間は、牛馬よりも憐れなものである。彼は、からだを毀され、心をけだもの化された、他人の富を生産するための単なる機械である。しかも、近代的産業の全歴史の示すところでは、資本は、もし阻止されなければ、全労働者階級をこの極度な頽廃状態に陥れるために遮二無二の働きをするであろう。」1897年に書かれたとは思えない新しさです。というか、何も変わっていないと言うべきか……。