図書館戦争

図書館戦争

図書館戦争

高校生に勧められて読みました。そういう機会でないと出会うことはなかったでしょう。恋愛がメインのお話ではあるのですが、検閲の話や、「不適切な表現」の話などは現代的な問題を鋭く指摘しています。メディア良化法という、検閲が合法化した世界を描いているのですが、その法律が成立したきっかけが、行き過ぎた表現の自由にあるとなると、全くのファンタジーとも言い切れません。日本のマンガが世界基準では児童ポルノに当たるという指摘は前々から言われていますし、週刊誌の下品さには確かに目に余るものがあり、メディア良化法のような法律が通る土壌はあると感じます。それだけにリアリティがあって、小説の面白さを支えています。しかしながら設定を詳しく説明しようと努力しすぎてかなり長々とした説明を登場人物に語らせるため、バランスが悪いところもあります。たぶん作者の本領はテンポのよい会話部分にあって、恋愛パートのかけ合いは、お互いが相手に恋をしているという自覚がないだけに、面白いです。社会人設定ですが、思春期真っ只中という感じで、高校生には身もだえする面白さだろうと思いました。