子供を殺してくださいという親たち

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

衝撃的なタイトルだが、これは筆者が精神障害者移送サービスの業務に従事するなかで実際に親から言われた言葉だという。
 本書には筆者の関わったさまざまなケースが生々しく語られ、事実に基づいているからか、迫力がある。また、精神保健関係の法規やシステムも詳しく解説されているので、現在精神保健分野で困っている人は読むとよいと思う。どこに相談に行ったらよいか、どのような公的支援が受けられるのかなど、知らないことが多い。
 いわゆる不登校から引きこもりになるというケースは学校現場にいる私も人ごとではないのだが、学校の場合生徒が転・退学してしまったり、卒業してしまったりするとなかなか連絡を取ることはできない。いまやそうした人たちが中年にさしかかり、親が高齢者になっている。そういう中で子どもが親に暴力を振るったり、お金を無計画に使ってしまったりなどというケースがあり、しかしながら犯罪を犯しているわけではないので警察もある程度以上は動けず、精神病院に入るほどでもないという人の場合、引き受け手がなく、家族がひたすら耐えるしかない。また、精神保健福祉法の改正によって、入院は3ヶ月が限度となった。治療の見込みのない患者は病院では預かってくれない。
 筆者の立場は最終章とあとがきに明確に語られています。問題を抱えている子どもは、発達上の障害などを抱えている場合もあります。また親からの過剰な期待につぶれてしまった場合もあります。いずれにしても親が子どもに向き合って問題をともに解決して行く方向に向かうことを進めています。