18歳からの選挙

18歳からの選挙 Q&A

18歳からの選挙 Q&A

  • 作者: 服部進治,沖村民雄,杉浦正和,若菜俊文,安達三子男,全国民主主義教育研究会
  • 出版社/メーカー: 同時代社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 満18歳での選挙権は、憲法改正論議にまつわる、国民投票法に関連する形で出てきた。しかし、成人を18歳とする論議は置き去りにされたままである。この18歳選挙権憲法改正につながる形で利用されるだけにしないようにしなければならないだろう。
 本書は全国民主主義教育研究会が編纂している。執筆者は現役の教師や退職した教師が主に担当しており、現在現場で実践している例なども紹介されてい手大変わかりやすい。また、現実問題として直面しそうな課題についても詳しく解説している。たとえば、満18歳というと、主に高校三年生クラスの中に選挙権を有する者と有しない者が混在するという中で、公職選挙法に照らしてどのようなことが違法とされるのかを具体的に説明している。ツイッターで自分の応援する候補者について有権者がつぶやく場合には構わないが、それにリツイートすることができるのは有権者だけであるとか。自分の身内が立候補した場合に、投票を求めて同級生(有権者の)にハンバーガーなどをおごることは、買収罪にあたる(もらう側も有罪)とか。
 また、本書では政治や選挙のしくみについてわかりやすく説明がある。さらに直近の選挙で争点になりそうな話題について6つにしぼって解説している。1.消費税、2.景気対策 3.原発 4.沖縄の基地問題 5.集団的自衛権 6.憲法改正 加えて、若者が現実に直面している課題として、ブラックバイト・ブラック企業の問題について具体的に扱っている。この章の執筆者は生徒に毎年アルバイト先でどのような事例があったかのアンケートをとっていることで、説得力がある。
 1969年10月に、文部省が学校内外において高校生が政治的活動をすることを禁止する通達を出した。1989年に国連総会で「子どもの権利条約」が採択され、18歳未満の子どもに「意見表明の権利」「表現の自由」「思想・良心・宗教の自由」「結社・集会の自由」を保障している。日本は1994年に条約を批准している。本書はこの時点で1969年通達を撤回すべきだったと指摘している。文科省18歳選挙権の実現を受けて、通達の見直しを今行っているそうである。本書の見解では、この通達によって若者の投票離れ、政治離れが起こったとしている。80年代までは20代の投票率が60%を超えていたが、2014年は33%である。
 模擬選挙の効果の大きさについて本書では語られており、具体的なやり方も指南されている。「模擬選挙推進ネットワーク」という団体もあり、様々な教材の提供、ノウハウの提供を行っている。また選挙管理委員会からは実際の投票箱や記載台を借りることもできるそうだ。
 今41歳の私も「主権者教育」など受けたことがなく、学生時代に政治に全く無関心だったのだが、これは私の責任とばかりは言えない。過去の私への反省も込めて、現在の若い人たちに主権者としての教育を手伝わせて頂こうと思う。