残念な教員

残念な教員 学校教育の失敗学 (光文社新書)

残念な教員 学校教育の失敗学 (光文社新書)

 現在の教員が置かれている立場がよくわかる本であり、教員以外の人が読んでも面白いと思います。授業力向上のためのアドヴァイスは具体的で的確で、これから教員を目指す人にもおすすめです。
 私自身もこの著者の分類でいうと「残念な教員」に分類されてしまうだろうなと思いながら、この人は言うだけのことはしているとも思いました。特に自分自身でもよくないと思うのは、何のためにしているかが不明確なまま授業をしていることです。もちろん、大きな目標として生徒の力を伸ばすためというのはありますが、今、今日のこの授業が何を目的としていて、どういう力をどのように伸ばすのかと問い詰められると答えられません。ロードマップが描けていないままに出発してしまっているのはそのとおりです。
 職場の人間関係やどうしようもない教員についての筆致は怒りが籠もっていて、わかるなあと思いながら読みました。新任の教員が希望をもって入ってきても、先輩教員のだめさ加減を見るに付け、無力感から結局だめな方へ堕ちていく感じ、ありますねぇ。頑張っている教員に育ててもらった教員の流れと、だめな方へ行ってしまった流れがあって、それがそれぞれ再生産されていくのですね。
 採用の問題も本当にそのとおりで、採用試験は教員としての資質を見るための有効なものさしにはなっていません。
 共感できる内容も多かったし、具体的な内容で自分でもやってみようと思うことは多かったけれど、筆者が理想とする教師が、子育てをしながらすばらしい授業をし、卒業生から結婚式に呼ばれる、睡眠時間3時間で頑張る小学校の教諭であり、この教師のようになろうと努力できる人は少数だろうなと思いました。筆者は結婚して家族かいるかどうかわからなかったが、使える時間のほとんどすべてを教育に献げています。それはすごいことだし、しかもそれが独りよがりにならないために振り返りと改善を怠らず、謙虚である。こんな先生に習う生徒は幸せであると思います。しかしこれを全員に求めることはできないだろう。そしてこんなに個人が頑張っていかなければならない制度になっている日本の教育はやはりもう制度的に破綻している。得るところの多い本書だが、まともに受け取りすぎてこのままにしなければ、ダメ教員だと自分を追い詰める人の出ないことを願う。