エヴリシング・フロウズ

エヴリシング・フロウズ

エヴリシング・フロウズ

 題名にあるとおり、すべてが漂っている感じの小説です。受験を控えた中学三年生男子が主人公で、その周辺の友人たち(あるいはクラスメートや幼なじみ)について語っていきます。時々事件らしきことも起きますが、基本的になんとなく時が流れていきます。主人公のヒロシは特に特徴のないおとなしい男子生徒で、ともすればいじめられかねない、スクールカーストでいうと下位に位置する目立たない少年です。しかし他人のことを放っておけない優しさを持っており、特に関わらなくてもいいことに巻き込まれて、面倒だと思いながら投げ出さずに最後まで一緒にいてくれるようなところがあります。女子生徒との関わりもあるのですが、恋愛対象とは見られておらず、人畜無害な感じがちょうどいい感じでモノを頼まれたりする。でもそんなヒロシのやさしさをわかっている人もいて、何となく作品全体にあたたかい雰囲気が漂っている。舞台が大阪で登場人物がやわらかい大阪弁で話すからだろうか。強いメッセージ性があるわけでもなく、ミステリーや謎解きがあるわけでもないけれど、読後にほのかな癒やしを感じさせる作品です。