夫夫円満

夫夫円満

夫夫円満

元大阪・神戸アメリカ総領事のパトリック・ジョセフ・リハネンと元ブラジル空軍航空管制官のエマーソン・カネグスケがそれぞれ自分の生い立ちを語り、パートナーについて語る。ゲイは今では珍しい存在ではないが、日本に関していえば、芸能人の一種のスタイルや芸風と思われていたり、「新宿2丁目」のイメージで揶揄されているのが関の山という気もする。はるな愛さんなどが単なるキャラではなく、性同一性障がいの観点から話をしたりしているので、まともに受け取っている人もいると思うが、性同一性障がいとゲイやレズビアンのような性的指向(嗜好ではない)は別の話だ。日本ではこれが人権問題であるとはあまり認識されていないように思う。パトリックやエマーソンはそれぞれアメリカやブラジルで差別に遭っているが、差別の強烈な国では運動も強力に起き、「権利」として確立される。パトリックは日本は同性愛者に寛容な国だと言っているが、私はそうは思わない。エマーソンはパトリックほど楽観的ではない。日本では問題として認識されていないだけだ。外国にはあるが日本にはないと思っている人もいるかもしれないし、自分の身近にいなければ問題ないと思っているのかもしれない。
 さて、本書を読むとユニバーサルデザインという言葉が浮かんでくる。どんな人にも使いやすいデザインがユニバーサルデザインだ。そしてそれは特に障がいのない人にとっても使いやすくなければならない。障がいのある人に使いやすくするために、そうでない人には少し我慢をしてもらおうという考えではない。LGBTが生きやすい世界はすべての人が生きやすい世界のはずだ。なぜなら、LGBTの人たちの願いは「自分らしく生きること」以外にないからだ。そしてそれはすべての人の願いだろう。多くの人に読んで貰いたい良書。