フェルメール全点踏破の旅
- 作者: 朽木ゆり子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/09/15
- メディア: 新書
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筆者は美術の専門家というわけではなく、しかしまったく素人というわけでもなく適切な解説と、未だに謎になっている部分への自由な想像力で絵の背景やフェルメールの人生を描き出しています。ミステリー小説を読んでいるようなおもしろさもあり、特別に絵に興味のない人でも楽しめそうです。
筆者のフェルメールの絵への関心は、フェルメールの絵には宗教的な寓意は少ないのに、崇高な感じを受けるのはなぜかということでした。フェルメールは当時の風俗画の画家達の約束事をある程度守りながら、逸脱しているところもあり、そこが魅力になっているようです。宗教革命によってプロテスタン国となったオランダではカトリックの信仰は認められませんでしたが、フェルメールはカトリックだったのではないかという話もあるようです。そうしたフェルメールの宗教心が風俗画の日常的な女性の立ち姿などに何か厳粛な感覚を与えているのではないかと筆者は推測しています。