同志社大学神学部

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同志社大学神学部

 佐藤優同志社大学神学部での学生時代を振り返って書いている半自伝です。学園紛争の第一世代はすでに卒業しており、まだその残り火が燃えているような時代です。
 学生同士が神学や将来について真剣に語り合い、教授たちも一人の人間として学生と向き合って神について、世界について語っている、本当にこのような時代があったのだろうかと疑わしくなるくらい、現代の状況とはかけ離れているという気がします。みんながみんなそうではなかったのでしょうかれど、この時代の学生はよく勉強している。とりわけ佐藤優は勉強好きだ。学問に打ち込んでいる部分を読むと、自分もきちんとしなくてはと思う。
 最後は外交官の試験を受けに行く場面だが、過酷な試験だと思う。こういう試験を突破した人たちが外務省にはたくさんいるわけですね。しかも佐藤優の受けた試験は上級試験ではなく一般試験です。いったい同じ人間なのにどこでこんなに差がつくのだろう。
 本書には神学に関する論争も数多く出てきます。興味深いけれど、知識がなさすぎて追いつかない。残念です。ひとつ面白かったのは、佐藤優無神論を勉強するために神学部に入ったのに、無神論が批判している神は偶像の神だと理解して洗礼を受けたという下りです。教会は体制側に組み込まれ、もともと持っていた批判精神を失ってしまった。プロテスタンティズムは資本主義と結びついてしまった。プロテスタンティズムがしっかりしていれば、社会主義があんなに広がることはなかった。社会主義とはキリスト教に代わる批判精神として生まれてきたものであり、非常に宗教的である、と分析している。私はこの部分はとても面白く感じたし、そうなのだろうと思いました。