サバイバル宗教論

サバイバル宗教論 (文春新書)

サバイバル宗教論 (文春新書)

 佐藤優氏は異色の人物だと思う。神学部から外務省に入り、ソビエト崩壊時に外部官僚としてモスクワにおり、政治にも深く関わって、獄中生活もしました。本書は臨済宗相国寺で行われた佐藤氏の連続講義をもとに書かれたものです。宗教のプロを相手にしかも禅僧たちを相手に宗教を語るというのは普通の研究者なら物怖じしてしまいそうです。佐藤氏の語りは経験と学識に基づいた、非常に論理的且つ実践的な宗教論です。いったいどんな勉強をしたらこんなに知識を集められるのかと圧倒されます。結構新しい若い人が書いた小説なんかも読んでいるし、実は「佐藤優」は何人もいるのではないかと疑いたくなるくらいです。
 世界の情勢をすべて金銭だけで説明しようとする考えもあるが、やはり民族の対立や独立運動などには経済だけでは説明しきれない宗教も問題が絡んでいることを実感します。
 世の中で片面からしか宣伝されていないことの裏側も語ってくれていて面白いです。今回衝撃的だったのは、スウェーデンのような北欧の高福祉国家は、監視国家であるという事実です。スウェーデンでは国民総背番号制が1947年に導入され、氏名、出生地、国籍、教区名、両親の名前、現住所、結婚歴、離婚歴、所有不動産などの情報が一元管理されており、生活のほぼすべてが国家(税務署)に把握されているそうで、銀行の預金残高が不自然に増えていたりしたら、それだけで脱税を疑われたりするそうです。こういう面は日本では全然報道されていないと思います。