教え力

「齋藤孝の相手を伸ばす!教え力」

「齋藤孝の相手を伸ばす!教え力」

 具体的であり、かつ理論がしっかりしているので、わかりやすく説得力のある教育書です。筆者は教師を育てる仕事をしています。本書も教育する立場の人間がどのような心構えで何をすればよいかが具体的に書かれています。内容はかなり厳しく、教える者に求められる水準は高いです。ただ選ばれた人だけができるという立場ではなく、具体的な作業を通じてスキルを上げていくことができるという立場に立っているため、今は足りなくても努力すればふさわしい教育者になれるのではないかと思わせてくれます。基本的に教わる側を性善説でとらえていて、私もそうあるべきだと思います。教わる側が退屈したり、やる気を失ったりするのは教える側の責任であるという立場です。筆者が繰り返し言っていることの一つに「教える側の熱意」があります。新卒の教師がしばしば下手でも生徒を引きつける魅力を持っていたりするのは、単に若いからというだけでなく、教師としての希望や熱意にあふれ、教えたい、生徒にできるようになってほしいという気持ちがあるからだというのは、そのとおりだと思います。ベテランになって授業はそつなくこなしていても、教師自身が教材に飽きているなど、熱意の乏しい状況ではよい授業にはなりません。筆者はそのためにも教材を自分で探してくることを勧めています。まずは教える人が面白いと思えるものを教える。これは基本ですね。