美男の立身、ブ男の逆襲

美男の立身、ブ男の逆襲 (文春新書 (440))

美男の立身、ブ男の逆襲 (文春新書 (440))

 本書は題名は目を引くが、内容はいたって真面目な文学研究です。社会科学的な内容も含みます。古代から近世にかけての容姿にまつわるお話です。古代には容姿の美しい男が出世し、人びとから賞賛された。それが文学作品にも影響を及ぼしている。仏教が日本に入ってくると、因果応報思想が容姿にも及んできて、容姿の良し悪しは前世の行いの報いとされ、美しさはますます称揚される。しかし武士の出現とともにブ男が評価される時代に入ってくる敵を威圧する力をもった異能・異形のものとして評価されてくる(筆者は「醜パワー」と名付けている。美しい男はむしろ虐待される時代に入ってくる。実際の時代でも男色が流行する。均整に入ると罪無くして虐待される美少年、罪あって虐待される美少年、悪の美少年と発展していく。
 容姿を軸にして文学史をとらえ直す試みは面白い。多数の書籍を引用して説得に富む。良書です。