心の力
- 作者: 姜尚中
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/01/17
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (6件) を見る
『こころ』でなぜ「先生」が自殺してしまうのか、「明治の精神に殉ずる」とはどういう意味なのか、この疑問については国文学の分野でもさまざまな説が披露されている訳ですが、これという定説はないようです。姜尚中はこの疑問に答えるべく論を進めていきます。
時代の変化に流されてただすべっていくことのできない、悩む人たち。そうして時代に取り残されたような気持ちになって時に死を選んでしまう人たち。誰ともつながれず、時代が要請する多数派の流れから落ちこぼれてしまう人たち。そうした人たちに姜尚中の目は優しい。それは姜尚中が在日として差別され、この日本にあって決して多数派にはなり得ないことと無縁ではないでしょう。多数派から次の時代の思想は生まれない。鋭い周縁からの目にこそ未来が宿っているものです。