親鸞をよむ

親鸞をよむ (岩波新書)

親鸞をよむ (岩波新書)

 本書は著者山折哲雄が断っているとおり、親鸞親鸞の思想についての概説書ではありません。身体で親鸞「よむ」ことを目指して親鸞の足跡をたどりながら、親鸞の思想を探っていきます。
 古人の思想について学ぼうとするとき、どうしても書物に書かれた情報だけを見がちであると思います。もちろん書かれた情報は最もその人の思想が表れていることは間違いないのでしょうけれど、交通機関も発達していない時代に長大な距離を歩いたその道のりや、山を登り、海を渡るそうした身体の動きは結構大切なのではないかと改めて思います。筆跡に残された筆遣いの力強さ、像に残された表情など、言語化されていない情報を私たちは書物の情報に比べて軽視してきたと思います。日常の私たちのコミュニケーションはその多くを非言語コミュニケーションに負っていることはよく知られていることです。そうであれば、古人の思想を探るにしてもこうした肉体的なアプローチはあっていいのではないかと思うのです。
 弟子から見た親鸞、カミ概念を親鸞はどう扱ったか、親鸞の妻とされる恵信は親鸞をどう見ていたか、筆者はこれまでの親鸞像とは違う親鸞の息づかいや肉体を何とか描き出そうと努めています。