メドベージェフVSプーチン

 500ページほどのなかなかの厚さの本でしたが、比較的読みやすい本です。多くのクレムリンウォッチャーたちの意見や他国の評論家の意見を引用して紹介した部分が多く、なるべく相対的な視点で本書を書こうという意図が伝わります。
 メドベージェフとプーチンが弟子と師のような関係にあり、メドベージェフはプーチンには逆らえないし、ロシアには指導者はプーチンしかいないというのが本書の結論です。ペレストロイカを推進したゴルバチョフも最近批判をしていましたが、プーチンの政治手法はまるで帝政ロシアの皇帝のような強権政治です。本書ではメドベージェフが民主化を掲げてある程度の改革を行おうとしたが、結局それに失敗し、プーチノクラシーに戻ってしまったとしています。プーチノクラシーの中身は、資源依存型の経済です。石油や天然ガスの会社をプーチンは次々と国有化し、国家主導の政治システムを作りました。利権に群がる官僚、横行する賄賂などによって、世界から投資先の環境が悪いと認識され、海外大手の企業が次々と撤退しています。筆者は様々な数値を挙げてロシアの現状を表現していますが、これを見ているとロシアの国際的な地位はかなり低くなってきているようです。ロシアの優秀な頭脳は海外に流出しているそうです。以前佐藤優が書いていた本では、ロシアのエリートは日本の学生とは比較にならないくらい勉強するから、ロシアはそのうち大国として復興してくると読んでいましたが、どうなのでしょうか。冷戦を知っている世代としては、ロシアは米露と併称されるイメージですが、BRICSの中でも地位が低下しているようです。プーチン政権は未だ続いており、現在進行形の話ですから、これからがどうなるか注目です。