ギリシャ・ローマ神話

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

 本書は野上弥生子が訳しており、序文を夏目漱石が書いている。漱石の文は弥生子への手紙でそれがそのまま載っているというなかなか面白い序文である。
 特別に本を読んでいなくても知っている話はいくつもあり、思い返せば西洋の絵画、建築、音楽、文学何をとってもこうした神話に一度もぶつからないということはない。そういう意味では必須の知識だろうと思う。日本の神話は知らなくても現代の文学や絵画などに特に支障はない。そう言い切れてしまうところが残念ではある。むしろそうした「正統」な文芸よりもアニメのようなサブカルチャーの方で神話はよく使われている。
 ギリシアローマ神話の神々は結構非道いことを平気でしている。それでもそれぞれに制約があって、こうした方がいいのだが、できないというようなことは結構ある。たとえば、誓約してしまった場合には神といえども、あるいは神ゆえにその約束は果たさなければならないとか。こうしてみると神も不自由な存在だ。面白いのは人間が神に上げられたりすることだ。この辺は日本の神々の感覚に近い。神々に階級のようなものもあるし、精霊みたいな神と人との間のような存在もいる。この辺も日本の神話に近い。
 地名起源説話や、自然界の説明説話のようなものは世界中の神話にある。こういう神話の共通性はどこからくるのだろう。