マクベス
- 作者: シェイクスピア,SHAKESPEARE,木下順二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/09/16
- メディア: 文庫
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私が面白いと思ったのは、予言についてです。嵐の海で魔女の予言を聞いてしまうマクベスとバンクォー。王になるという予言を聞いたマクベスは自分の仕えている王ダンカンを殺してしまいます。バンクォーは一緒に予言を聞いていたために、マクベスがダンカンを殺したことに気づいてしまい、マクベスに殺されてしまいます。そして予言通り、バンクォーの子孫が王になっていくのです。この作品を読んでいくと、マクベスの予言はマスベスが王を殺さなくても成就するのか、それともそうでないのかがまず気になるところです。つまり予言を聞いたことも予言の一部なのかどうかということです。マクベスは明らかに予言を聞いたことにより、自分の中に隠されていた権力欲に気づいてしまいます。王の忠実な臣下として何不自由なく過ごし、人々の信頼も得ていた将軍であったのに、王位を望んだためにすべてを失ってしまい、暴君となったマクベスからはすべての人が離れていくのです。最後は王位にしがみついて反乱軍に殺されてしまいます。そう考えるとこれは予言と言うより教唆といった方が正しい。人の中に普段かくされている欲望、それは常識によって箍がはめられているのですが、人知を超えたものから必ず実現すると請けあってもらえるなら、人間はたいがいのことはしてしまいそうです。いや、人知を超えたものでなくても、信じてしまえばそれは実現の方向へ進んでいくのではないでしょうか。「予言の自己成就」を思わせる語りです。そう考えると、現代も数々の予言に満ちています。特に週刊誌の類は予言だらけといってもいい。その多くは目を惹くことを求めたガセネタかもしれませんが、信じる人が多くなればそれは実現してしまうのです。小泉純一郎の自民党圧勝も民主党の政権交代も、アベノミクスもそういう予言の自己成就的な部分があるのではないでしょうか。