それから
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1989/11/16
- メディア: ペーパーバック
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思うに代助は極端な人だ。その極端が平岡の妻三千代に恋して、実業家との結婚を断り、親から勘当されるという結論を導く。代助自身が考えているように、実業家の娘と結婚して、なおかつ三千代との関係を続けるという手もあったはずだ。でも代助はそれを純粋でないという理由で退けてしまう。いかにも代助らしい考え方だ。『三四郎』の美禰子は現実路線を歩んで恋を捨てる(誰に対する恋かはともかく)。漱石の描く女性は現実的で、男性よりずっと強い。三千代もいざ、代助との関係が決定的になったとたん、代助より覚悟が決まっている。代助が最も怖れる死さえもはばかることなく口にして、代助をおびえさせる。平岡は代助の裏切りを長い手紙にして代助の父に送り、代助を窮地に陥れて復讐する。思うにこの話で勝者は三千代だけである。一度は捨てられたと思った愛を取り戻す。この後病気で三千代が代助に会えずに死んだとしてもそれは変わらない。