嵐の日に読むのにふさわしいか。

よい子になりたい―少女の心に棲みつく悪魔

よい子になりたい―少女の心に棲みつく悪魔

 本書は、「刹那まこと」という女の子が書いた日記とふりかえって書いた文章に、カウンセラーの長谷川博一氏が分析やコメントを加えてできています。
 小さい頃からよい子を演じてきたまことが、途中で限界になり心に「悪魔」が出てきてしまい、母親への暴力や、自分へのリストカット、身体の不調、不眠、自殺願望などに苦しめられている様子を詳しく綴り、自分の描いたイラストもあります。祖父母や父親にも学校の先生にも医者にも気づいてもらえず、演じていた心に無理が生じて、母親への怒りとなって爆発したのでした。まことは笑顔の仮面が張り付いてしまい、人前で自分の本当の気持ちを表現することができなくなっていました。
 長谷川カウンセラーは直接まことに会ったのではなく、母親のカウンセリングをしていました。母親の母(まことの祖母)は、嫁いた先で祖母の看病にかかり切りになり、母親も娘と同じく抑圧された家庭環境で自分の気持ちを出せずに我慢をして過ごしました。母親が嫁いだ家も伝統的な家族間の強い抑圧的な家で、お風呂に入る順番、食事のメニューなどは男性・年長者が優先され、女・子どもの思いは切り捨てられていました。母親は自分がされてきたように、娘も育てたのでした。
 これが長谷川氏のいう「世代間連鎖」のモデルです。まことの行動は、母親を変え、父親を変え、家全体を変えました。お風呂の順番は自由になったそうです。家族とは関係性で結ばれた一つの社会です。その構成員の一人でも変化すれば、全体が変化せざるを得ないのです。逆に言えば、一人の人が変わるには、全体の変化が必要であるということでしょう。