音楽とは

音楽とは何か ミューズの扉を開く七つの鍵 (講談社選書メチエ)

「魔法」「システム」「表現」「リズム」「旋律」「ハーモニー」「コミュニケーション」という七つの観点から音楽の本質に迫ろうという試みです。
　音楽の専門知識のない私は「リズム」「旋律」「ハーモニー」のあたりは少し苦しいところもありましたが、全体的には平易な解説で、面白いです。雰囲気的な語りをしていないところが好感が持てますし、だからといって、音楽の持つ感情的な部分、感動を感じる部分を疎かにもしていません。むしろ音楽への感動が著者にあるからこそ、語りは抑制して書いている風でもあります。
　最終章の「音楽はコミュニケーションである」とエピローグのあたりで展開されている、言語的理解が基本的に対象との分離・異化の認識であるのに対して、音楽が同化のシステムで、共鳴を起こすものであるというのは、実に納得のできることです。そしてそれをヒトという動物が、社会性を持った人間になる進化の鍵にまで発展させているところは、とても興奮しました。