範囲が広い。

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)

 本書は序章と6章の本文と補章で成り立っています。主に大学での講義を元に、教養的な社会学の入門を紹介しているのですが、実に面白いです。私も社会学部を選ぶべきだったかも。補償は少し難解とあったとおり、少し難しいですが、将来の社会のあり方を具体的に指し示していて、興味深いです。交響圏とルール圏の中での「自由」の問題などは、様々な組織に応用できますし、もちろん、9・11以後の混沌とした世界への一つの示唆です。
 本書が書かれたのは2006年ですが、「現在」を語っているとしか思えないし(ある意味3・11以後さえ見えているのではと思わせられます)、もっと先の未来を見ています。ドラッカーが、もうすでに起こった未来について語っていると言っていたけれど、実際、社会学のような学問はまだ多くの人の目には映っていないけれど、すでに起こって、未来には多くの人に見えるようになる事実を語る学問なんだと思います。言いかえれば、今起こっていることへの未来へつながる解釈を提供する学問ということです。
 知的な刺激をたくさんもらえる本です。この混沌として先の見えない世界が、むしろそうであるからこそ、「面白い時代に生きている」とわくわくさせてくれる本です。