都市という現象

都市の政治学 (岩波新書 新赤版 (366))

都市の政治学 (岩波新書 新赤版 (366))

 全部で三章仕立てで、1.都市の現在 2.都市の政治学 3.都市の世界化となっています。個人的には1と3が面白いです。2はなかなか難しいです。特にヨーロッパに行ったことがなく、歴史にも疎い私にはイメージが湧きにくいということもあります。1の「コンビニ繁盛記」などはそこだけ読んでも面白いです。パリのパサージュ(アーケード)の出現と資本主義社会の到来とを関連づけながら、欲望を刺激して消費を促すアーケード商店街の仕組みを詳説し、デパートの発生、さらにデパートからスーパーマーケットへの転換を語ります。売り子が客を誘惑しつつ物を売るような形態から、セルフサービスの形態へと変化していく様子の延長線に、コンビニがあります。コンビニは客を誘惑するような装置は何もない。あるのは便利さです。そこに贅沢さではなく、快適さを求める行動の変化があります。筆者はコンビニの発展にはコンピューターネットワークが不可欠だと説明します。均質化したサービスとどこにでもあり、どこでも同じという便利さ、そしてそのことは、都市そのものを均質化していくと筆者は主張します。
 均質化、同質化の話は本書の中心的なテーマで、第二章で近代都市の発生(ネーション・ステートとしての都市)の歴史を振り返りながら、現在の都市はそれを超越して、次の段階、均質化へと入っているという話が第三章で語られます。
 筆者は本書で繰り返し、悲観的な見方をしているわけではないとか絶望しているわけではないと書いていますが、かえって読んでいる方は絶望しそうになる内容ではあります。もちろん、自分が生きている時代はほんの切り取られた一部でしかありませんから、自分の体験に基づいた感覚など標準にしようもないのですが、どうも世界はつまらない方向に発展している気がして仕方ありません。本書の発行は1994年。約20年前です。世界の均質化は筆者の予見通り、ますます進んでいます。ネットワークシステムに属していないものなどもうほとんどないのではないでしょうか。あるいは見えなくさせられているのか。より貧弱なものを食べ、身につける世界化の流れには、近年アンチテーゼが広がりつつあります(スローフード地産地消など)。しかしそれらはむしろ贅沢品と映ってしまうのが現代です。私はひそかに近年のマラソンブームなども単に健康志向・ダイエット志向というだけではないものを感じています。