すべての子どもに関わる人へ
- 作者: 長谷川博一
- 出版社/メーカー: 樹花舎
- 発売日: 2002/12/01
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
本書は2002年に出版されており、もう10年も前の本で、90年代の凶悪少年事件などを話題にしています。しかしその内容は古びるどころか、ますます新しくなっていると思います。これは残念ながらというべきです。実際、この本を読んで、自分のしつけ観を変えることができた人は、かなり楽になると思います。ただ変えるのは容易ではないかもしれませんが。
筆者の指摘で、少子化の現在は、大人の目が子どもに注がれすぎて、子ども監視社会になってしまっているというのはそのとおりだと思います。昔は怖いカミナリおやじみたいなのがいて、よく怒られたものだということを引き合いにだして、子どもは厳しくしつける方がよいという意見に対して、昔の怒られ方は「芋の子洗い方式」で、ひとりひとりにかかるプレッシャーは少ないものだったと筆者は反論します。現代は、むしろ親が「しつけない」と決意するくらいでちょうどよい、子どもののびのびした子どもらしさが失われ、よい子が生産される社会は危機的であるとしています。筆者の考えは、愛情を持って受容すること、それに尽きるようです。本書は筆者の豊富な臨床体験に基づいて構成されているので、アドバイスは具体的、ひとつひとつの言葉が現実的な重みをもって浮かび上がってきます。マニュアル化された育児書などを読むより何倍も役に立つことでしょう。
そういえば、ル・グィンは、最も偉大な力は「受容」と言っていました。