さいはての島へ

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)

 「ゲド戦記」ははじめ3部作で完結という構想だったらしいです。新しい主人公としてアレン(レバンネン)が出てきます。この少年とゲドの会話を聞いていると、オジオンと幼いゲドがル・アルビの山を逍遙している様子が目に浮かびます。魔法使いらしく、暗示的に話す(しかも必要なときにだけ)師にいらだつ弟子。だんだんと弟子が見えるようになってくると、師の偉大さが別のレベルで見えてくる。
 剣の師匠と打ち合いをしている時に、師匠をもう少しで負かしそうになった、その時の師匠のこの上なくうれしそうな顔をレバンネンは思い出します。実はここに答えは出ているのではないかと思います。
 この話ではクモと呼ばれる永遠の命を欲するあまり、かえって死にきることができなかった男が出てきますが、人にとって永遠の命というのは、自分の命が最も信頼できる者に託される時に完成されるのではないか、それはオジオンが千里眼のヘレスから受け継ぎ、ゲドに引き継がれ、レバンネンに受け継がれたものです。ゲドが全ての力を失って死と生との境を閉じ、レバンネンにその志を託したことは、大賢人ネマールが命を捨てて救ったゲドの命の完成だった、永遠なる命への道だったと思われます。
 一読目では全然読めていなかったことに、再読で気づく。きっともう何年かして再々読したら、もっと見えてくるものがあるのだろうか。