一神教の思考

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)

 対談形式で読みやすい本です。キリスト教初心者にも、熟練者(?)にも面白い本を目指したというだけあって、確かに面白いです。
 キリスト教への疑問をタブーなしでぶつけていき、真面目に議論していく様子が面白いです。キリスト教を擁護しようとか批判しようという前提がないので、自由な議論が展開していると思います。個人的には第三部「いかに『西洋』をつくったか」が興味深かったです。キリスト教を信仰していなくても、一神教的な思考方法をキリスト教を通じて身につけた西洋が世界を席巻した、その仮説に説得力があります。イスラム教の方が一神教としては優れているのに、なぜキリスト教の後塵を拝することになったのか、中世まではイスラム文化の方がずっと進んでいたのに、というお話は、その辺の知識に疎い私には新鮮でした。やはり哲学についてもう少し勉強しないとこの辺の話はちゃんと理解できなさそうです。 キリスト教には宗教法がなく、そこが宗教法が明文化されているユダヤ教イスラム教とは違い、世界をつくった神の自然法に基づいて人間が自由に法律を作れた。それが西洋の近代化を促したという説は魅力的です。日本人は法律を作ることに抵抗はないけれど、徹底的に法律を守る感覚もないので、法の支配を理解できず徹底できない。自分の同意しないほうりつは守る必要がないと思っている。人間の都合が優先してしまう。そこに一神教世界と多神教世界の特徴を見ているところが面白いです。
 この本を読んでいると、どの時代にどこに生まれたかということが決定的に思考様式も決定してしまうのだなと思いました。