ニヒリズムの神髄

これがニーチェだ (講談社現代新書)

これがニーチェだ (講談社現代新書)

 筆者自身も書いているように、正統派の「入門書」とはひと味違うニーチェ論だと思います。しかしそれだけに面白いです。入門書にしては難解なところもありますが、何度も読めば何とかついていけます。空間の比喩を用いてニーチェの思想を三つの空間に分けて考えているのが独創的で、わかりやすいと思います。ルサンチマンニヒリズムの説明もわかりやすく、何と言っても「誠実さ」の点でニーチェ的です。ニーチェ自身が陥っている陥穽についても分析してあり、興味深いです。だいたい入門書はその人自身の思想を批判せずに説明するものがほとんどだからです。ニーチェは語り得ない部分に踏み込んで語っているので、独断的で説明不足だったりする部分があるようで、そこに容赦なく切り込んでいる本書は面白いです。