ひきこまれる

黄色い目の魚 (新潮文庫)

黄色い目の魚 (新潮文庫)

 高校生が主人公のお話です。絵を描くことを巡ってのお話の中に、恋や家族、友人の問題が複雑に現れてきます。面白いのは、主人公の一人である男の子が絵を描くのが上手なのにサッカー部に所属しているという設定です。これだけ複雑にいろいろな要素を入れると全体が破綻したり、焦点がぼやけたりしそうですが、一人一つが丁寧に描かれていて、それでいてくどくなったり、テンポが悪くなっていないところが優れています。心の描写もついひきこまれてせつなくなるような雰囲気で、よくぞここまで書けるものだと思いました。