ナンネル・モーツァルト

 いかにもフランス映画という感じでした。画面は基本的に薄暗く、個室で会話が静かに交わされ、会話なし、音楽なしの情景描写がしばらく続くような場面もあります。ハリウッド映画に慣れていると耐え難く退屈に思えるかもしれませんが、個人的には親密感があって好きです。ナンネルが父親のレオポルトの操り人形として生きていくことに疑問を感じ、独立しようとして失敗し、時代に要求された女性として生きて行かざるを得ない悲しみが描かれています。友人になった、国王の娘が「もし私たちが男に生まれていれば」と言っている場面はせつないです。
 アマデウスは今回脇役なので、何にも考えていない、父親にいいなりの少年です。レオポルトの興業と音楽への執着と娘を理解しようと努力する父親の姿がいいバランスで描かれていると思います。ナンネルがあんなに長生きだったとは知りませんでした。