今から考えないと。

単身急増社会の衝撃

単身急増社会の衝撃

 世の中にこんなにデータ化されたものがあることに驚きます。データの処理の仕方には意図が入る余地がありますから、そのまま鵜呑みにはできませんが、それにしても恐ろしいです。
 日本の社会保障制度を含め、様々な公的制度は「夫婦と子どもからなる世帯」を「標準世帯」として設計されているのですが、現在、全世帯の中で最も世帯割合の高い世帯類型は、「単身世帯」です。単身世帯とは、死別や離婚、親と同居していない未婚者などを指します。これだけでも、現在の制度設計からやり直さないと現実には合わなくなっているのは明らかです。
 単身者世帯の増加の背景には、超高齢化社会の到来と、非正規労働者の増加が挙げられます。いわゆるワーキングプアの問題です。若年層の失業や低賃金は、結局国家財政に響き、社会保障制度を崩壊させてしまいます。また、現在問題になってきているのは、40代50代の失業者です。働くことのできる世代であるため生活保護を受けにくく、年金をもらうには早すぎるという社会保障の狭間の世代です。自殺者が多いのもこの世代です。
 筆者は日本と他の国とのデータも使いながら比較していますが、ヨーロッパの国々の多くは日本よりも高齢化が進み、その対策も進んでいます。筆者が挙げているイギリスの高齢化対策事業は、将来的に日本がモデルとすべき内容です。特に社会的孤立の問題と住居の問題は早急に手を打つ必要があるでしょう。
 ワーキングプア対策には、これもイギリスの例を挙げて、「給付つき税額控除」の導入を提言しています。これは、所得が課税最低限以下の世帯に、税額控除相当分を給付金として支給する制度で、「負の所得税」(マイナスの税を支払う)と呼ばれています。低所得世帯の就労意欲を損なうことなく、生活支援をすることができます。生活保護のような、資力調査も必要ないので、受給者は屈辱感を感じなくてすみます。
 社会保障制度については、筆者も指摘するとおり「白紙」から始めることはできず、今ある制度と矛盾しない制度を手直しながら作り上げていくしかありません。そのために筆者が主張するのは、消費税の増税などによる社会保障費の捻出、多額の国債の解消などを挙げています。現在の設計のままでは破綻するのは確実で、というのは、現在の制度は高齢者の介護を家族がすることを前提に作られた制度であり、家族がいない高齢者が多数になることが予想される未来では、まったく対応できないからです。
 筆者は最後に国民の政治不信をいかにして払拭するかを語っています。きちんと説明すれば、増税は免れないことは多くの国民が分かっている。政治家は増税論議を避けてきた、という指摘には全面的に賛成です。政治家が、目先の利益をちらつかせれば、票を獲得できると国民を愚民扱いしているのです。