強く明るい本

あした元気になあれ―部落(ムラ)に生まれてよかった

あした元気になあれ―部落(ムラ)に生まれてよかった

 部落差別の現実についてよく分かる本です。著者も書いていますが、「わかる」というのは知識としてわかるだけでは不十分で、差別されている人の痛みや悲しみにどれだけ想像力を駆使して共感できるかだと思います。想像力の欠如は現代日本人の共通する病だと思います。これは部落差別に限らない問題で、著者のような活動は他の差別問題や日常の人間関係にも十分に関係することです。
 それにしても自分が間近で差別発言を聞いたことがないからかもしれないが、世の中には実に恐ろしいことを平気で言う人がいるものだ。無知からくる差別というのは、かたくなな信仰と同じでたちがわるい。説得を受け入れないからだ。しかもその差別の根源は根拠なしのものであり、人の手で作られたものだ。これも信仰に似たところがある。鰯の頭も信心からといけれど、信じている人にとってはそれが「真実」であり、他人がそれを覆すのは並大抵のものではないだろう。