マスターとは「達人」の意味で使われているようだ。この
キートン氏は、軍隊経験もあり、その世界では英雄視されている達人でもあり、大学では将来を嘱望されていた考古学者であり、学生時代には皆のあこがれの的であった女性を射止めた達人(?)でもあるのだが、妻とは離婚し、考古学者としては定職に就けず、祖父と共に暮らす娘に将来を心配されている、情けない男でもある。
キートンの立ち位置は常に、組織の外である。
キートンは永遠に何かに属したいと願いながら属しきれない存在でもある。その辺が、はじめから一匹狼を志向しているハードボイルドな仕事人とは違う(たとえば、ゴルゴ31とは全く違う)。安住していないところに
キートンの魅力はあると思う。どこにも属さず、安住しないがゆえに、
キートンの思想は自由で何ものにもとらわれていない。また、一人で生きていく力を持っている。それでいて自分の力を過信せず、他者の力を借りる度量もある。
キートンはたぶん、あらゆる男性の永遠のあこがれなのだろう。