パワー (西のはての年代記 3)

パワー (西のはての年代記 3)

 三部作の完結編です。ル=グィンらしく、今回もいろいろと考えさせてくれます。奴隷制ジェンダー、国家そして、文字の力など、今回のテーマは題名に書かれている通り、「力」です。原題は訳者によるとpowersと複数形になっているそうで、実際物語には様々な力が出て来ます。その力に守られている時、人はその不健全さに気がつかない時もあります。主人公はガヴィアという奴隷の少年です。未来を予知する力と一度見たものは忘れない記憶力を持っていますが、幼く考えも未熟です。彼が様々な経験をしながら成長し、力に魅せられ、力に恐れ、力に失望し、力の使い方を学んでいきます。前2作と舞台や時代は同じですが、地方が全然違いますし、前2作の登場人物も少し出てきますが、ほとんど関係がないのでこれだけ読んでも大丈夫です。それにしてもル=グィンの作品に流れる、女性への不当な扱いに対する鋭い指摘、また女性の力についての気負わない描写には、いつも目を開かれます。