神々の山嶺

 映画を見損ねて、DVDのレンタルはまだということで、原作を読みました。夢枕獏というと陰陽師のイメージでしたが、山岳小説が面白い。あとがきによると、ヒマラヤも何度も登っているという山の猛者のようです。作品を読んでいると、本当に息苦しくなってくるくらいリアルな描写で、筆力あるなぁと思いました。
 内容はミステリー要素も強く、次々とページをめくりたくなります。エヴェレストで頂上付近で行方不明になったイギリスの登山家は頂上を踏んだのか?その謎を解くためにネパールと日本を舞台に話が展開していきます。中年にさしかかった主人公が仕事や人生について疑問を感じながら、しかし生きていくほかない。新しい夢を見るには先が見えすぎている。しかし諦めるには早い気もする。その主人公が山に取り憑かれた男の人生を追っていくうちに変わっていく。難のために山に登るのか。それは何のために生きるのかと問うことと同じだと、標高7000m近いこの世の果てで問い続ける場面は本当に息苦しくなってきます。