少年の名はジルベール

少年の名はジルベール

少年の名はジルベール

 『風と木の詩』という少年同士の肉体的な絡み合いを含む友情を描いた作品を少女漫画で実現した竹宮惠子さんの自伝です。竹宮惠子さんというと私が思い浮かべるのは『地球へ…』です。80年代に劇場版アニメにもなり、2000年代に再度アニメ化されたので、竹宮作品で最も有名でしょう。
 竹宮惠子が同年代のマンガ家萩尾望都と同居した「大泉サロン」と呼ばれるボロアパートでの生活や、マンガを描く喜びや苦しみが語られています。友人の増山法恵さんの少女マンガ界に革命を起こすという熱意に押されて竹宮惠子は挑戦的な作品を描いていくがなかなか納得のできるものが描けない。『風と木の詩』の構想を編集部に持っていっても、こんなもの少女漫画に載せられるかと拒絶されてしまう。しかし何度も挫折しながらマンガを書き続けて、本当に世の中を変えてしまった。
 竹宮惠子京都精華大学でマンガを教え、学長にもなり、2014年には紫綬褒章も受章しています。ひたすら一筋に打ち込んできたものがある人の強さが感じられます。多くの人が彼女の周りに集まってきて、さまざまな助力をしています。しかし竹宮惠子は自分のしたくないこと、できないことはしない。頑固に自分を貫いていきます。そこがすごいなあと思います。文章も魅力的で一気に読みました。