違っているからおもしろい

家族5人違っているからおもしろい―発達障害一家、今日も元気に多動中 (ヒューマンケアブックス)

家族5人違っているからおもしろい―発達障害一家、今日も元気に多動中 (ヒューマンケアブックス)

 発達障害の当事者本も最近は結構よく出ていますが、「夫」目線からの本は新しいと思いました。しかも発達障害に詳しい「理解ある夫」が妻の障害について客観的に語っているというのではなくて、発達障害についての知識もなく、妻の障害も受け入れられない状態の(だからたぶん極めて一般的な)夫が、妻の障害、生まれてきた長男、次男、三男の障害を受け入れていく(というか受け入れざるを得ない)過程がコミカルに描かれています。実際にその状態で生活していたらかなりキツイだろうなということも、深刻でなく語ることができるというのは、本当の意味で強いと思いました。
 乳幼児の急患時の対応から学校でのイジメ、支援学級のあり方、散髪に行くことなどなど日常の些細なことから大きなことまで克明に描かれているので、発達障害を抱えている当事者、その家族などが読むとガイドブックとしての役割を果たすのではないかと思います。筆者もそれを意識して具体的な支援先のアドレスなども載せています。また、知識ゼロの夫が妻や子の障害を受容し、役割を果たすようになる過程も世の夫たちには先達となる内容だと思います。そしてもちろん、当事者ではない多くの人たちにとっても本当のことを知る機会となるでしょう。「発達障害」という言葉は氾濫していますが、実際どうなのかはよくわからない部分も多いし、たぶん当事者以外にはわからない(あるいは当事者もわからないかも)のかもしれないけれど、どのような社会であることがよいのかを示唆してくれます。そして本書でも言っていますが、それはすべての人にとって暮らしやすい社会に近づくことです。いわゆるユニバーサルデザインということですね。