ノスタルジーなのか。
- 作者: 伊集院静
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/04/05
- メディア: 単行本
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ここで出てくる「先生」は色川武大(阿佐田哲也)のことで、雀聖と呼ばれた博打打ちであり、小説家でもある人物です。ナルコレプシー(眠り病)に罹っている先生と、妻を亡くして以来、アルコール中毒と精神的な不安に悩まされている「サブロー」(伊集院静本人だろう)が旅打ち(各地の競輪場を賭ながら回ることをいうようです)を続けながら、回復していく物語といったところでしょうか。でもストーリーに意味があるのではなく、「先生」の懐の深さや、どうしようもない悲しみや苦しみと、その先生に惹かれていく、これまたどうしようもない悲しみを抱えた人たちのことが丁寧に書かれています。いつも思いますが、伊集院静の文体はあっさりとしていて清潔です。それでいて、情景がちゃんと記憶に残っている。なかなかできないことです。そしていつもなつかしい感じがします。