井上節
- 作者: 井上ひさし
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/03/01
- メディア: 単行本
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明治時代に翻訳語が次々とできたことに触れて、「right」という言葉を福沢諭吉は翻訳不可能としたのに対し、西周が「権利」と訳したが、それは「力ずくで得る権利」の意味の漢語であり、おかげで現代の私たちは「権利」を主張するのは悪いことではないかと罪悪感を抱く結果になっているとか、「自由」も「わがまま勝手のし放題。思うままに振る舞う」という意味なのにフリーダムやリバティの訳語にしてしまったために、「自由」に良くないイメージがつきまとい、「自由のはき違え」とかいう言葉もあると書いているところは、とても納得しました。
やまとことばと漢語、外来語、文法や言葉の乱れ、項目だけ羅列すると堅苦しい話になってしまいそうですが、井上節に載せるとどことなくユーモアがあり、平和への思いがあり、弱い者へのやさしさ、暴力への怒りが感じられます。