少しずつ進むしかないか。

場所と産霊 近代日本思想史

場所と産霊 近代日本思想史

 西田幾多郎の「場所」と折口信夫の「産霊」を語るために、著者はアメリカから説き起こす。「近代日本思想史」と副題についているけれど、ほとんど日本人については語られない。終点に西田幾多郎折口信夫が配される。その媒介として鈴木大拙がクローズアップされる。アメリカに鈴木大拙が持ち込んだ仏教概念と大拙が身につけた西洋哲学とが、日本の思想の源流になっているというお話。井筒俊彦が最後に少しだけ語られるが、これはよく理解できた。全イコール一であり、多であるような世界は哲学として今わからなくても、感覚的にはよく理解できる。それにしてもこの本を読んで、思想の地平の広さに呆然としてしまう。こういうことを考えている人たちが、自分と同じ時間しか与えられていないとはどうしても思えない。