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日本語 語感の辞典

日本語 語感の辞典

 語の意味だけではなく、その語の持つイメージや雰囲気、まさに「語感」としか言いようのないものを言葉にして説明してくれている便利な辞典。語感というものは言葉にしがたいものだと思いますが、それを言葉にしているので、読む人によって納得できる部分とそうでない部分もあると思います。でもこうした一つのスタンダードが示されるのは良いことだと思います。すべてをうのみにして暗記したりせず、これを手引きにして自分の語感を磨いていくのが正解でしょう。おもしろかったものを挙げてみます。
 フランス…「フランス」という通常の片仮名表記では特別の語感は生じないが、「仏蘭西」と書くと漢字の重々しい雰囲気のせいで高級感が増す感じになる。新字体の「仏」を「佛」という正体字にすればそういう感じはさらに強まる。「佛蘭西料理」という店の看板は単に古風だというだけでなく、値段が心配になって店の前で財布の中身を調べたくなるような高級感を演出する。また、平仮名で書くとやわらかい感じになり、語学校の前で「ふらんす語」という看板を見ると、宿題を出さずに手を取って教えてくれそうな優しい雰囲気を感じ、その代わり何年通ってもスタンダールサルトルが読める段階まで進まないような気がしてしまう。なかなか面白いでしょう?
 しなやか…弾力性があって抵抗なく曲がるさまをさし、会話でも文章でも使われる優雅な雰囲気の和語。「しなやか」という語は柔軟さと強靱さを兼ね備えた好感度の高い表現であったが、最近は粘り強さの面が意識されない傾向が見受けられる。谷川俊太郎氏が、この「しなやか」の語感が衰退していることを嘆いておられたそうです。
漢文法基礎  本当にわかる漢文入門 (講談社学術文庫)

漢文法基礎 本当にわかる漢文入門 (講談社学術文庫)

 お役立ち本第二弾。講談社学術文庫はサイズ的に使い安い上、内容の充実しているので、家にもいくつかあります。
 さて、受験生向けの漢文解説本は数あれど、ここまで徹底的に「そもそも」に立ち帰って説明し尽くしている本はないでしょう。エッセイ風のくだけた口調で読みやすい上、必要なことをきちんと説明しています。本当に勉強したい人にはおすすめ、急がば回れの典型的な本だと思います。