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チックをする子にはわけがある―トゥレット症候群の正しい理解と対応のために (子育てと健康シリーズ)

チックをする子にはわけがある―トゥレット症候群の正しい理解と対応のために (子育てと健康シリーズ)

 トゥレット症候群についての最新知見が載っている(と思われる)本です。絵本のような入門編から入るのがよいかと思います。「チック」という呼び名は日本でも昔からありましたが、トゥレットという言い方は割に最近のことのように思います。始めにそうした症状に名前を付けた、ジョルジュ・アルベール・エドアルド・ブルートゥス・ジル・ド・ラ・トゥレット博士の名前だそうです。それにしても長い名前だ。
 トゥレット症候群には、大別して、音声チックと運動チックがあり、それが軽度か重度か、一時的なものか慢性的なものかでさらに分類されます。小児の一時的な軽い運動チック症状は10%を越えるそうで、特に男子の方が多いようです。音声チックや慢性的な重い運動チックなどは周囲の偏見や差別の対象となりやすいようです。
 トゥレットもケアの基本は軽度発達障害などと同じで、周囲の理解と受容、環境調整に尽きるようです。周囲の知識不足のために不適切な扱いを受けて二次障害を起こすというのも重なります。また、トゥレットとADHD強迫性障害自傷行為は併存することがあります。
 これも発達障害などと共通ですが、脳の機能的な障害と認識されるようになったのは最近で、かなり長い間心因性のものと思われていたことです。もちろん、引き金になることはあるようですが。私も昔読んだ本には、チックは幼年期の性的虐待に原因があるというような説明がされていた記憶があります。こういうことも無用に誤解を生んだことと思われます。現在では、脳の器質的な問題で、ドーパミンノルアドレナリンセロトニンなどが関係していることが分かっており、薬物治療が有効です。
 問題は治療にこぎつけるまでです。本人・周囲の無理解、偏見、差別そうしたものが治療を遅らせ、事態を悪化させるようです。こういうことは何にでも言えることですが、正しい知識、しかも最新の知識を持つことは、無用な偏見・差別を生まないために極めて重要です。