三国志 第八巻作者: 宮城谷昌光出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2009/09/15メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見る

 第八巻では、曹操劉備関羽張飛などの三国志の有名人が次々と亡くなっていってしまうちょっと寂しい巻です。そのような中でも宮城谷氏のすばらしいところは、そうした有名人ばかりを取り上げず、いわば脇役たちの姿を生き生きと描くところです。
 宮城谷作品の人物は生き生きとしています。それは作者の人物への敬意と、歴史叙述の謙虚さによると思います。いわゆる名将と言われる有名な人物を派手に書くことは凡庸な作家でもできそうですが、歴史書の一部にふいに現れて消える人物をひとりの人間として描くのは並大抵の力ではできません。しかも完全に作者の創作した人物ではなく、実在の人物として綿密な調査をして浮かび上がる姿は善とか悪という単純な人物像ではもちろんなく、年齢とともに変化し、歴史に翻弄される生身の人物です。宮城谷三国志は、今までの三国志観を変えてくれます。
 第八巻には、よく書物が出てきます。会話の中で書物の引用などをして、有利に交渉を進めたり、命拾いしたり、読書人の生き方が描かれていて興味深いです。