現代中国女工哀史作者: レスリー・T.チャン,Leslie T. Chang,栗原泉出版社/メーカー: 白水社発売日: 2010/02/01メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (4件) を見る

 中国東北地方にルーツを持つ、アメリカ在住のジャーナリストである著者が、発展を続ける中国の最下層を支えている女性の出稼ぎ労働者を取材した本です。といっても外国人が批評的に劣悪な条件で働く労働者に同情的に、あるいは社会正義を振りかざして書いているわけではありません。成功を夢見て田舎から出てくる出稼ぎ労働者と時には一緒に寝泊まりして取材した、本音の記事です。そこには悲劇的なものはあまりないです。少なくとも「女工哀史」から連想されるようなものはありません。外資系の企業からすれば安い労働力を獲得でき、出稼ぎ労働者からすれば、田舎では手に入らない富を手にすることができる、という需給バランスができあがっています。出稼ぎ労働者は2億人近く、あるいはそれ以上いるそうです。日本の人口を超えています。とても太刀打ちできるものではありません。
 出稼ぎ労働者の取材と平行して、著者自身のルーツを探す旅が語られます。日中戦争国共内戦文革、中国の一家族を語ることは、これらのことを語ることと同義です。親戚、友人が敵味方に分かれて戦った歴史であり、繁栄と没落の家族氏でもあります。現代中国の過去と現代の一端がよく見える作品です。