それぞれの在日

母――オモニ――

母――オモニ――

 小説仕立てになった、 姜尚中氏の自伝です。主に母親の一生を中心に扱っています。一口に「在日」といっても、当たり前ですが、それぞれに違った人生があります。戦後のたくましい母の生活には頭が下がります。熊本で始めたクズ拾い業を大きな商店にまで発展させた苦労。発展のきっかけが、祖国を二分する朝鮮戦争だったということは、どんな心境なんだろうと思わせられます。
 作者が神の目を持っているのは当然としても、その都度登場人物に憑依するような形で語らせているのは、人称の問題としてどうなのかなと思うところはありましたが、全体的には気持ちのこもった小説だと思います。