発達障害と虐待の深い関係

子ども虐待という第四の発達障害 (ヒューマンケアブックス)

子ども虐待という第四の発達障害 (ヒューマンケアブックス)

 杉山先生の臨床経験に基づいた詳しい説明が分かりやすい発達障害シリーズの中でも、特に虐待に特化したものが本書です。虐待と発達障害に関しては他の本にも詳しく語られているのですが、本書ではより詳しい解説と、事例の紹介に加え、ケアの実際を詳述しているのが特徴です。また、反応性愛着障害と解離については特に詳しい説明がされています。
 本書を読むにつけ、筆者のいう「早期療養」が「予防医学」として極めて重要であることを感じます。
 どの国でも虐待への対応は次の六段階を踏むという。
1.虐待の否認 1960年代のアメリカや1980年代の日本
2.社会が虐待の存在に気づく ネグレクトが身体的虐待に優るとも劣らない重大な問題と認識される
3.虐待が深刻な現実であることが認識され、法整備が進む。母子分離が行われる。
4.母子分離が解決につながらないことに気づき、親への積極的な援助が開始される。
5.小学校の段階から性的虐待に焦点を当てた治療教育が開始される。
6.3歳までに、愛着形成をサポートする働きが行われる。現在欧米ではこの段階が模索されている。
日本は段階で言うと3から4への過渡期のようです。現在、虐待の通報があって子どもが保護されても、結果的に親の元へ返される子どもが圧倒的に多いというのが現状です。法的な限界もありますが、収容する施設が満杯状態であることが原因です。また、収容された施設でも虐待が再生産されるという悲劇が起きています。これは収容する人数が多すぎることと、職員の数が少なすぎること、里親制度が貧弱なことなど、国家施策の問題です。筆者は「国によるネグレクト」と名づけていますが、このような事実がもっと広く知られなければなりません。