日本の未来は…

そだちの臨床―発達精神病理学の新地平 (こころの科学叢書)

そだちの臨床―発達精神病理学の新地平 (こころの科学叢書)

 あいち発達障害支援センターの臨床経験に基づいた、とても分かりやすく、実践的な書。現場にいる人が書いているなとすぐにわかります。そしてその経験から従来の成人の自閉症統合失調症で今までの治療が効力を発揮しないような例には、発達的な視点が必要であると述べています。また、虐待にかなりの紙幅を割いていて、虐待と発達障害との関係、虐待が今や第四の発達障害と呼ばれている所以を詳しく説明しています。そして虐待による障害の治療には母子並行治療が有効であると述べています。「愛着」をキーワードに幼児期、学童期の発達に焦点を当てて議論をすすめています。日本の精神科医療の問題点にも踏み込んだ議論をしていて、示唆的です。著者も言っているように、子どもの養育は未来への投資なので、手を抜くべきではないと思います。