知識注入週間

 題名からすると、専門的な難しいことを書いてあると思いそうですが、内容は極めて具体的です。臨床経験に基づいた理論に、脳科学の先端知識を援用してより正確で効果的な方法を紹介しています。読めば読むほど、発達障害を抱えている人の生きづらさは格別だと思わざるを得ません。
 発達障害の人が増加しているのか、発見される率が増えたのか、たぶん両方だと思いますが、少なくとも社会性の障害に関しては、全体の社会性が落ちていることが、障害の度合いを高めているという感じはします。適切な支援を受ければ、かなり社会に適応していく場合が多いそうですが、その適切な支援というのが、無自覚的に行われていたのが、昔の社会だったのだろうと思うからです。本書に「遊び」を取り入れたソーシャルスキルレーニングが紹介されていますが、その内容は自分が子どもの頃は普通に行われていたと思います。そうした訓練(というか、日常生活)の中で自然に身につける社会性そのものが低下してしまって、発達障害と診断される必要のない人も、適切な経験を経ないために障害者にされているのが、現代社会なのだなと改めて思わされました。本書にも少し触れていますが、ポータブルゲーム機やケイタイの弊害はかなり大きなものがありますね。