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大炊介始末 (新潮文庫)

大炊介始末 (新潮文庫)

 山本周五郎の短編小説集です。剣豪宮本武蔵を笑いものにしたような作品が所収されています。どれも周五郎らしい視点の作品です。よく下町のあたたかさなどと言われますし、そういう面もたくさんありますが(「おたふく」とか)、それは一面を言い当てているだけで、貧乏人のしたたかさやずるさや弱さも書かれていて、それもまた周五郎らしい味だと思います。また、いつも思うことですが、少女の心情を描くのが上手だということです。「落ち葉の隣」なんかはそうです。「牛」というのが平安時代が舞台の小説で、語り手のある珍しい作品です。