本物のモンスターは

Monster (1) (ビッグコミックス)

Monster (1) (ビッグコミックス)

 浦沢直樹の『MONSTER』を読了。マスターキートンでも出てきた東西ドイツの統合以後の様々な問題や、ヨーロッパの東側の問題が見え隠れします。こういうことやっていたのかもしれないなあと思わせる、人体実験の結果が多くの人の人生を狂わせていきます。アエラ浦沢直樹自身が書いているように、『20世紀少年』に続いて、「記憶」にまつわる物語です。途中でだんだん、ヨハンが「トモダチ」に思えてきたりします。浦沢直樹の頭の中はどうなっているんだろうというくらい、人物関係が複雑に絡み合い、それぞれの人物の記憶や視点から見える風景を読者は追っていくうちに物語に引き込まれていきます。読者は作中人物たちよりも多くの情報を手に入れる視点にいるはずなのに、作者の視点には近づくこともできません。見えそうで見えない真実。うまいなあと感心してしまいます。