なぜ山へ登るのか

孤高の人(上) (新潮文庫)

孤高の人(上) (新潮文庫)

孤高の人(下) (新潮文庫)

孤高の人(下) (新潮文庫)

 加藤文太郎という主人公は実在の人物で、小説でも実名で出てきます。舞台は彼が勤めている神戸を中心に語られていくので、私の知っている六甲の山々も出てきて親近感を感じます。加藤は人付き合いが下手で、一人で山へ登るが好きです。その歩きが徹底して一人であることと、驚異的な速足で、単独行の加藤文太郎の名は全国に広まっていきます。多くの冬山を単独行で踏破し、生死の境をさまよいながら、一人であることにこだわります。職場での昇進や人間関係、結婚なども通して加藤は成長していきます。最後は初めてパーティを組んだ冬山登山で命を落とします。なぜ、山へ登るのかを考えるために作者が書いたと言われる本です。